朝日30度、しゅわしゅわ

シリーズしゅわしゅわ

この記事は、奄美黒糖焼酎の炭酸割りについて、ちょっとだけ深く考えてみるシリーズしゅわしゅわの3回目です。
1回目は、「一番橋、しゅわしゅわ」です。
2回目は、「奄美30度、しゅわしゅわ」です。これらの記事もどうぞ。

硬水のお酒

軟水、中硬水の次は、硬水のお試しです。

硬水、日本では海外からの輸入ミネラルウォーターのイメージが強いと思いますが、酒好きには結構馴染みのある水です。
例えば、日本酒で硬水と言えば灘の宮水が有名で、キリリと辛口のお酒を醸す名水として名を得てきました。硬度は180mg/Lくらいと言われていますのでしっかり硬水です。
黒糖焼酎の世界でも、喜界島、沖永良島、与論島の3島は珊瑚礁が隆起して出来た島で、水は硬水。これらの島のお酒は硬水が深く関係しています。

余談になりますが、日本石鹸洗剤工業会が平成16年に水道統計を元にまとめた結果(※1)によると、全国5,239か所の浄水場のうちWHO基準で硬水となる硬度120mg/L以上のところは308か所と、日本はほとんどで軟水なんですね。

ということで、3回目の今回は、奄美群島でもっとも古い蔵元であり、創業当初から硬水で仕込んでいる蔵元、喜界島の朝日酒造さんに注目したいと思います。

実は僕は朝日の炭酸割りが大好きでして、日々の炭酸割りは朝日か龍宮が定番。これでもかって言うくらい、今まで炭酸割りで飲んできた銘柄です。

過去2回、一番橋ではロックで飲むのが最高だと思ってた銘柄の、炭酸割りの美味しさのポイントを探し、奄美30度では強炭酸でスカッと美味しいだけじゃなく、微炭酸で味わう濃密な旨味の炭酸割りに出会うことができました。
今回は、慣れ親しんだ炭酸割りの背景を探る挑戦なのです。

※1: http://jsda.org/w/06_clage/4clean_208-2.html

朝日30度と炭酸の写真

試飲の方法

これまでと同じスタイルです。

  • 氷で味が変化するのを避けるため、氷は使わない。
  • 代わりに、炭酸も朝日も、どちらも冷蔵庫で冷やしておく。
  • グラスに一番橋を計量カップで量って注ぎ、その後、炭酸も計量して入れる。
  • グラスは同じものを使用して、試飲する前に必ず水で口をリセットする。

炭酸水いろいろ

炭酸水も、これまでと同じものを用意しました。それぞれの炭酸水だけのコメントは、一番橋の記事をご覧ください。

商品名 原産 硬度(mg/L) 炭酸
ゲロルシュタイナー ドイツ 1302
ペリエ フランス 400.5
オジュ フランス 169
ウィルキンソン タンサン 日本 軟水(100未満)※2
ザ・プレミアムソーダ
山崎の天然水でつくったソーダ
日本 94
南アルプスの天然水 スパークリング 日本 30
クラブソーダ 日本 0-40.0※3
いろはす スパークリング 日本 27.7-40.6

※2: ウィルキンソン タンサン製造元のアサヒ飲料さんに問い合わせたところ、製造工場は全国数ヶ所にあり、それぞれ地下水であったり水道水だったりと水源は異なっていて、個別の数値は公表していないとのこと。ただし、いずれの工場も特に硬度が高い水は使用していないため、軟水(100mg/L未満)ですとの回答を頂きました。

※3: クラブソーダ製造元の友桝飲料さんに問い合わせたところ、採取の時期により硬度に幅はありますが、0-40.0の範囲の軟水ですとの回答を頂きました。

参考サイト:

試飲の写真

朝日30度 5 : 炭酸 5

奄美では濃い目の硬水で新たな出会いがあったので、今回も期待。20mlずつの40mlで試しました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)

  • ゲロルシュタイナー
    濃いなぁ。でも調和の気配はあって美味しい。やや苦みもあるが、それもまたお酒の味。
  • ペリエ
    ペタッと口にまとわりつく感じ。合ってないなぁ。
  • オジュ
    よく調和している。ちょっと濃いけど、バランスがよい。微炭酸の印象が悪くない。
  • ウィルキンソン タンサン
    意外にも炭酸感がなくて、特に割ったことによる良さがない。
  • ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
    甘みが膨らむ。これも良い。ちょっと後味に苦味が走るかな。
  • 南アルプスの天然水 スパークリング
    心地良く、甘みと香りが立つ。纏まりというよりは、爽快感。
  • クラブソーダ
    南アルプスよりも一段相性がよい気がする。それでも炭酸の強さが後味にちょっとクセを残す。
  • いろはす スパークリング
    臭う。やっぱりいろはすはダメなのかな。

ゲロルシュタイナーの濃密な感じは、もはや炭酸割りを飲んでる気がしませんね。ゲロルシュタイナーは自然炭酸水なので、同じくらいの硬度の水(コントレックスとか)で水割りも試したいところです。
それよりも好印象なのが微炭酸組。オジュと山崎の天然水でつくったソーダは、どちらも朝日の味を引き出すとても良い印象です。ちょっと濃いかな、いや、これくらいが美味しいのかな。
全体的に、奄美30度と比べると、濃くてもまとまりがあるケースが多かった印象です。奄美30度に続いてウィルキンソンがそれほどじゃないのが意外です。

朝日30度 4 : 炭酸 6

今回も本命の濃度。20mlと30mlの50mlで試しました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)

  • ゲロルシュタイナー
    香り高くとても良い。香り自体も麹も黒糖も混じった土気のような香り。かなり美味しい。炭酸が落ち着きすぎるとよくない。これは最初が美味しい。
  • ペリエ
    ペリエでの試飲の中では一番美味しくなってきた。でもゲロルシュタイナーほどすっきりせずに、ミネラルがまとわりつく。炭酸が落ち着いてくると、黒糖の甘みが後の方に出てきて、最初より美味しい。
  • オジュ
    思ったよりまとまらず、ミネラルが主張する。炭酸感は意外とあり、その分だけバランスを保っている。後味に残る印象が良くないのかな。
  • ウィルキンソン タンサン
    チョコっぽい苦味で、やや主張がキツイもののなかなか美味しい。炭酸感もほどほどに落ち着く。ちょっとおいて炭酸が抜けてきたら顕著に。
  • ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
    麹が悪目立ちしすぎる。もっさり。これも炭酸が落ち着いてくると、まとまりが出てきてしつこさがなくなった。軟水になると麹が目立つし、まとまってきても炭酸で割った面白さはいまいち。
  • 南アルプスの天然水 スパークリング
    炭酸の強さが麹を盛り立てて、やややり過ぎ感がある。悪くないけどなぁ。
  • クラブソーダ
    スキっと香り立つけど、やはりやややり過ぎ。落ち着いてくると良いバランス。
  • いろはす スパークリング
    だめだ、やっぱり臭う。決定的に、自分にあってないん合ってないんだな、いろはす。

全体的に濃さが中途半端な印象です。硬水だとやや薄い印象だし、軟水だとまだ濃いのかな。
面白かったのはウィルキンソン。チョコっぽい苦味は他ではあまり感じないちょっと不思議な感覚です。何に由来してるのかなぁ。やっぱり黒糖かな。

朝日30度 1 : 炭酸 2

今回も3:7もどきの1:2。20mlと40mlの60mlで試してみました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)

  • ゲロルシュタイナー
    もう少し濃いほうがよかったな。ちょっとミネラルが出すぎてしまった。
  • ペリエ
    これも良い旨味が出てるけど、やっぱりちょっとミネラルっぽすぎる。
  • オジュ
    これもバランスが崩れすぎてる。
  • ウィルキンソン タンサン
    バランスが整ったら特徴が消えたという感じ。悪くないけど、すすめるポイントが無いといいますか。
  • ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
    丸さがしつこい印象。ちょっとくどい。
  • 南アルプスの天然水 スパークリング
    いいねー、軽快で爽快。この濃度だと炭酸が強くてもバランスが良い。
  • クラブソーダ
    これも美味しい。南アルプスよりもちょっと太めかな。炭酸が落ち着いてきてからも美味しい。太くて、少しの刺激。
  • いろはす スパークリング
    やっぱりなんか臭うな。酸味が出るし、いまいち。

強炭酸だとこれくらいの濃度で爽快に飲む方が気持ち良い。舌で味わうよりも、喉と鼻で感じる香りが素晴らしいです。
一方の微炭酸は、奄美30度とは違ってさほど伸びない印象。

朝日30度と硬度

奄美30度と同じく、朝日30度でも硬水、軟水でそれぞれの美味しさがありました。

硬水による濃密な印象は、奄美30度で感じたもの以上にみっしりとしています。ただ、炭酸感の重要性は薄く、硬水であることのほうが重要なように思えます。硬水に感じるミネラル感の味わいが苦手な人にはオススメしませんが、朝日の味わいをより強く味わいたい人には面白いんじゃないかと思います。

ちなみに喜界島の水道事情を紐解くと、朝日酒造さんのある西部地区は浄水設備に軟水化設備がないためとても硬水とのこと(※4)。平成20年のデータですが、6つの水源のうち最も硬度が低い水源でも191mg/L、高いものでは391mg/Lなのです。実際に蔵で使用している仕込み水、割水との関係性は、興味深いものです。蔵元にお会いしたらいろいろ聞いてみようと思います。

軟水は、やはり炭酸の強さに依存するケースが多かったです。軟水には強炭酸が正義ですね。

※4: http://www.town.kikai.lg.jp/kikai03/forms/suido/suido_vision.pdf

朝日30度と炭酸の強さ

強炭酸なら軟水、微炭酸なら硬水という点は、奄美30度と同じ印象で基本的な考え方でしたが、軟水でも炭酸が抜けて微炭酸になったときの味は興味深かったです。4:6でのウィルキンソンや山崎の天然水でつくったソーダは、黒糖や麹の味を引き出して、いつもぐびっと飲む感覚とは違う楽しみ方でした。燗冷ましならぬ炭酸抜きみたいな感じですかね(苦笑)。

強炭酸の爽快感はもはや言うまでもない心地よさです。麹がパッと弾けるように香り、ごくごくと喉を鳴らしてのんじゃいたい味わい。乾杯は、ビールじゃなくてこれでお願いしたいところです、ホント。

朝日30度と比率

硬水は濃い目が大事ですね。ゲロルシュタイナーもオジュも5:5が良かったし、ペリエだと4:6。少なくとも1:2とかまで薄くなると、水の個性が強く出すぎてバランスを損なうということです。

一方、軟水は濃くても薄くてもそれぞれの美味しさでした。スカっと爽快な強炭酸の軟水に似合う比率は、1:2がぐびっと飲みたい飲み方ともマッチしていますが、ちびちびと香りも味も刺激的に楽しむなら濃く作ってもいいんですねと。

日頃の朝日30度

冒頭でも書きましたが、僕は日頃からしょっちゅう朝日30度を炭酸割りで飲んでいます。日頃の朝日30度の炭酸割りと今回の試飲の結果との関係性を考察することで、好みの理由を探ってみたいと思います。

まず、普段は自宅の水道水を炭酸水メーカーでブシュッと炭酸にして使っています。我が家の水道水の硬度を市の水道局に問い合わせたところ、3ヶ月に1回の測定で概ね70-85mg/Lとのこと。山崎の天然水でつくったソーダほどじゃないですけど、結構硬めの軟水でした。
炭酸水メーカーは「ツイスパソーダ」で、強炭酸とは言いませんけど微炭酸よりは十分強い炭酸水になります。

余談ですが、この「ツイスパソーダ」は水以外にも炭酸を注入できるため、我が家では前割りのお酒に炭酸注入という楽しみ方もしております。朝日酒造さんのブログでも、たかたろうと一緒に紹介されていました。

普段は氷を入れてグラスの半分よりちょっと少ないくらいまで朝日を注ぎ、グラスぎりぎりまで炭酸水という作り方なので、感覚的には1:2と4:6の間くらいの味わいです。これが食中に飲むときの味わいで、喉が乾いてる一杯目だとこれよりやや薄目にしています。

今回試した炭酸水と比較すると、感覚的には、濃い目に作ったときはウィルキンソン、薄目に作ると南アルプスの天然水やクラブソーダに近くて、全体的にそれよりも線が細く、味わいが濃くて、香りも麹が香っている感覚です。普段はこれがまぁ美味しくて、満足してるのです。
その美味しさを今回の結果と比較すると、爽快感だけじゃなくて味わいもしっかり楽しめているあたりは、炭酸がキツすぎないことがポイントのようです。炭酸がちょっと落ち着いたくらいの味の立ち方は、図らずもツイスパソーダの炭酸力の限界と合致してたのですね。裏付けがとれた感じです(笑)。

総括

日頃の飲み方とは氷の有無が違いますから、温度のインパクトが大きく違います。それでも、今回いろいろな炭酸水を比較した結果から思うのは、僕は日頃美味しい朝日の炭酸割りを飲んでるんだなぁという自慢です(笑)。
以前はウィルキンソン、南アルプスの天然水なんかを購入していました。その頃から朝日30度の炭酸割りは飲んでましたけど、朝日30度を選択する機会が増えたのはツイスパソーダを導入した1年前からです。好みに合ったんですね。
その好み具合の根拠を確かめられたのは面白い結果でした。

そんな結果を踏まえて総括すると、硬水なら微炭酸で濃い目に作ると幸せです。軟水なら、濃度はお好みですが、ちょっと炭酸を抜いたぐらいでゴリゴリの強炭酸じゃないほうが味を楽しめます。

今回のイチオシはオジュ。濃い目に作ったときのほんのり微炭酸の刺激とたっぷりの味わいは、食事というよりもデザート、蔵元自家製の黒糖「黒いダイヤ」を齧って飲むのにぴったりでした。

今回の結果には、日頃の炭酸割りを凌駕するほどのポイントを見出すことが出来なくて、まとめるのにちょっと困ったのも事実です。普段の味がやっぱり好みだなぁと。
でも、慣れ親しんでる点はたしかに大きな要素ですが、それだけじゃない好きな理由の一端が見えてきたのは、こういう実験系の醍醐味かもしれませんね。

2015/05/18

書いた人

koching

奄美黒糖焼酎語り部。
もったいなくて飲めないお酒を買い集めるのが趣味。
甘いものでも辛いものでも、なんならお酒(の瓶を眺めること)を肴に酒が飲める人種。