奄美30度、しゅわしゅわ
シリーズしゅわしゅわ
この記事は、奄美黒糖焼酎の炭酸割りについて、ちょっとだけ深く考えてみる「シリーズしゅわしゅわ」の2回目です。
1回目は、「一番橋、しゅわしゅわ」です。こちらの記事もどうぞ。
徳之島の水は?
前回、長雲一番橋の炭酸割りをいろいろと試して、目当ての美味しい作り方は見つけることが出来ました。
成果はそれだけじゃなくて、炭酸水の種類による味の変化の幅にはずいぶん驚かされたのです。硬度でここまで変化があるのかとびっくり。
軟水で仕込まれる長雲を試したので、じゃあ中硬水、硬水ならどんな結果になるのかと、気にならないわけがありません。
ということで、2回目の今回は、軟水と硬水の両方の水質を持つ島である徳之島にスポットを当ててみたいと思います。
ちょっと古いデータ(※1)ですが、徳之島の水道は、硬度が高い浄水場で169mg/L、低い浄水場で33mg/Lと、大きく開きがあります。場所によってはもっと硬度が高いとか。
これは島の地質によるもので、島の中央から北部にかけては花崗岩からなる地質で、いわゆる軟水の水質。一方西部から南部にかけては隆起珊瑚を基盤に持つ地質のため、カルシウム含有量が高い酸性の硬水が採取されるためなのです。
場所によって水質が大きく異なる徳之島の特徴が大きく反映されていると言えるのが、奄美酒類さんのお酒たち。奄美酒類さんの大きな特徴は、島内5か所の蔵の原酒を等量ブレンドすること。造り手の個性だけじゃなくて、土地の水の個性も含んだ、さまざまな美味しさが詰め込まれてるのです。
今回は、そんな奄美酒類さんの代表銘柄である「奄美30度」で、炭酸水との相性を紐解いてみたいと思います。
※1: http://softwater.jp/what/000091.html
試飲の方法
一番橋を試したときと同じスタイルです。
- 氷で味が変化するのを避けるため、氷は使わない。
- 代わりに、炭酸も奄美も、どちらも冷蔵庫で冷やしておく。
- グラスに一番橋を計量カップで量って注ぎ、その後、炭酸も計量して入れる。
- グラスは同じものを使用して、試飲する前に必ず水で口をリセットする。
炭酸水いろいろ
炭酸水も、一番橋のときと同じものを用意しました。それぞれの炭酸水だけのコメントは、一番橋の記事をご覧ください。
商品名 | 原産 | 硬度(mg/L) | 炭酸 |
ゲロルシュタイナー | ドイツ | 1302 | 強 |
ペリエ | フランス | 400.5 | 強 |
オジュ | フランス | 169 | 弱 |
ウィルキンソン タンサン | 日本 | 軟水(100未満)※2 | 強 |
ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ |
日本 | 94 | 弱 |
南アルプスの天然水 スパークリング | 日本 | 30 | 強 |
クラブソーダ | 日本 | 0-40.0※3 | 強 |
いろはす スパークリング | 日本 | 27.7-40.6 | 中 |
※2: ウィルキンソン タンサン製造元のアサヒ飲料さんに問い合わせたところ、製造工場は全国数ヶ所にあり、それぞれ地下水であったり水道水だったりと水源は異なっていて、個別の数値は公表していないとのこと。ただし、いずれの工場も特に硬度が高い水は使用していないため、軟水(100mg/L未満)ですとの回答を頂きました。
※3: クラブソーダ製造元の友桝飲料さんに問い合わせたところ、採取の時期により硬度に幅はありますが、0-40.0の範囲の軟水ですとの回答を頂きました。
参考サイト:
奄美30度 5 : 炭酸 5
一番橋のときに炭酸割りにしてはやや濃すぎたから、今回はやめようかなと思ったのですが、条件を揃えるということで今回も実施です。ただ、作る量は20mlずつの40mlと半分にしてみました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)
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ゲロルシュタイナー
旨い。フローラル、舌触りがねっとりしたような、塊感。黒糖齧ってるような。美味しい。 -
ペリエ
薬っぽい。でも後味に旨味が湧いて、余韻は豊かで面白い。 -
オジュ
ちょっと辛みが湧いて、味が濃密。ややミネラルが臭いすぎるけど、悪くない。ただ、後味が尾を引く苦味でしつこい。 -
ウィルキンソン タンサン
まとまりにかけて、印象が薄い。とがる。 -
ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
甘みが香る。でも舌先に酸味を感じて、味自体は纏まったのに印象がさほどよくない。 -
南アルプスの天然水 スパークリング
炭酸が大きな泡で刺激して、軽快になる。そのためか、甘みよりも麹の香り。 -
クラブソーダ
ドライでそっけないけど、まとまりは悪く無い。余韻もさっぱりでなかなか美味しい。 -
いろはす スパークリング
水が臭う印象。酸味が残りあまり良い余韻に感じない。
やっぱり濃いですね、全体的に。でも、ゲロルシュタイナーには爽快にグビッと飲むイメージとは違った美味しさがあって、これは面白い結果でした。軟水だとやはりまだ濃すぎるためか、美味しさという点で一体感が弱い印象です。
奄美30度 4 : 炭酸 6
今回も本命の濃度。20mlと30mlの50mlで試しました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)
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ゲロルシュタイナー
5:5ほどじゃないけど、これも香りを立たせる。非常に相性が良い。炭酸感は妙に薄くて爽快感はとは違うけど、奄美の味を豊かに引き出していて美味しい。 -
ペリエ
甘みは湧くけど、口の中にへばりつくような水の臭いがじゃまをする。 -
オジュ
甘みと酸味が良くマッチして、なかなかよい。ミネラル感はほどほど、なかなかよい。 -
ウィルキンソン タンサン
抜けが良すぎて、やや軽い。それでも5:5よりは良いバランスになっている。 -
ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
水っぽいという言い方が的確とは言わないけど、奄美の味の前になんかあるという感じ。程よく纏まってるけど、感動は薄い。 -
南アルプスの天然水 スパークリング
キリッと爽快。余韻に奄美がある。軽く爽やかに飲むならこれも良い。 -
クラブソーダ
同じくきりりとするが、一段濃い感じ。2:3ではこれがかなり高評価。 -
いろはす スパークリング
やはり水が先に立つ。5:5よりはエグみがなくて落ち着いた。
ゲロルシュタイナーの美味しさは濃いほうがいいんですね。これだとやや薄まってしまった。一方、軟水組は爽快感が出てきて本調子。でも一番橋と違って、これが一番うまい!って感じには突き抜けなかったし、山崎以降のものは炭酸水の味が先に来るような印象があって、もう一歩。本命、敗れたり。
奄美30度 1 : 炭酸 2
毎度の3:7もどきの1:2。20mlと40mlの60mlで試してみました。
(以下のコメントは飲んでるときに書き殴ったものそのままです)
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ゲロルシュタイナー
丸くて滑らかな舌触りの後、ぽてっとミネラルの味。クドすぎず、後味はつるりと、かなり美味しい。炭酸感は求めちゃだめだけど。 -
ペリエ
相変わらず、中途半端なタイミングでミネラルが湧き立ってしつこい。 -
オジュ
柑橘系の香りが湧いて、微炭酸でなかなか面白い印象。酒好き向きではなくて、お酒が苦手な人向きの雰囲気。 -
ウィルキンソン タンサン
スカッとしすぎるけど、バランスはこの比率が一番いいかも。 -
ザ・プレミアムソーダ 山崎の天然水でつくったソーダ
纏まりよく、香り高く、非常に調和して美味しい。今日一やね。 -
南アルプスの天然水 スパークリング
スカッと爽快で、飲みやすさという意味では一番心地よいかも。 -
クラブソーダ
濃さも苦味もあり、しっかりした味もあって爽快感もある。とても良い。 -
いろはす スパークリング
どこか苦味が消えないのは、もういろはすのせいということで。残念。
強炭酸の軟水組は、これくらい軽めの方が一体感も爽快感もあって美味しい。舌で味わう美味しさというよりは、鼻で楽しむ美味しさが全開になります。
一方で、オジュと山崎の天然水でつくったソーダの微炭酸組が独特の美味しさで新たな発見です。特に山崎は格別の調和具合で、ちびちび飲みたい炭酸割りと言えるのかもしれません。
余談なのですが、ゲロルシュタイナーはそのまま飲んだらちゃんと強炭酸なのに割ったらものすごく炭酸感が弱くなったのは、ミネラル分による舌触りのせいなのでしょうか。でもペリエはちゃんとしゅわしゅわしてたから、ちょっと不思議な体験でした。
奄美30度と硬度
硬水、軟水でそれぞれの美味しさがありました。
硬水では、ゲロルシュタイナーががっつり濃くても美味しく、その上、濃くても薄くても、相応の楽しさがあったという新たな出会いでした。ちなみに試飲終了後、5:5で氷を浮かべて飲んだところ、炭酸はもう抜けかけてたものの、非常にスモーキーで奄美の味を楽しむことができました。
他の硬水だと、オジュがなかなか面白い存在感でした。適度な濃度なら、甘みを引き出して良い相性だったと言えます。
山崎の天然水でつくったソーダ以外の軟水は、味を引き出す感じはあまりなかったのですが、強炭酸でスカッと心地よく飲める印象。ものすごくマッチするというポイント(濃度にしろ銘柄にしろ)があるというよりは、5蔵集まっている懐の深さが楽しめるという印象で、いい意味で、いろいろ細かいことを言わない良酒だなぁと奄美の美味しさを再確認できました。
でも、軟水の場合は全体的に濃すぎるのは良くないという印象かな。
奄美30度と炭酸の強さ
強炭酸なら軟水、微炭酸なら硬水という色分けが出来ます。
お酒自体の味、炭酸水との調和による味をしっかり楽しめる微炭酸はオススメです。 特に山崎の天然水でつくったソーダは、全体の調和具合が最高でした。これは硬度の相性よりも微炭酸との相性のよさが出ているのかもしれません。硬水の場合は好き嫌いが分かれそうですが、軟水の山崎の天然水でつくったソーダは万人受けする完成度の高い味に仕上がってオススメでした。
一方の強炭酸、夏に飲むには心地よい爽快感というなんともあたりまえな感想です。なんですが、その心地よさとクセのなさは、グビグビと延々飲みつづけられる夏の先ず一杯に最適なんですね。
奄美30度と比率
硬水なら濃い目でも美味しく、ゲロルシュタイナーは5:5が最高という結果。強炭酸で香りを立たせる分には、1:2くらいの軽めの比率が心地よいという結果です。
比率の部分で一番面白かったのは、オジュ。4:6がイメージする味でなかなか美味しかったのに、1:2になったらちょっと他の炭酸水では出てこなかった香りが匂い立ち、ガラリと印象が変わるという結果。多分、最終的にこれくらいの比率になるように、4:6に氷を浮かべてもう少し冷やすと完成形かもしれません(ゲロルシュタイナーに気をとられてて、試すのを忘れてました)。
総括
まず、一番橋のときは評価が高くなかった硬水に、新たな面白さが見えた点が今回の大きな成果でした。
濃い目のゲロルシュタイナーはすごく好みでしたし、薄めのオジュの香りはちょっと他とは違う存在感。ちなみにペリエは炭酸が強くていまいちな相性だったことを踏まえると、飲み口が微炭酸だった点がポイントだったのです。いつもとちょっと違う奄美30度の味に出会うなら、「硬水」、「出来上がりが微炭酸」をキーワードに、好みの味を探してはいかがでしょうか。
とは言え、条件が揃えば良いという単純なものでもありません。実はもう一本、硬度が250mg/L程度の微炭酸の硬水を追加で試したのですが、あまりの相性の悪さに掲載を見送っているのです。
硬水は、水自体の味の好みや炭酸の強さ、比率などで、美味しさの振れ幅が大きく感じられます。ピンポイントで美味しさを探す面白さはありますが、多少のリスクもありるということですね(苦笑)。
一方で、爽快に夏を楽しむなら、クラブソーダか南アルプスの天然水 スパークリングがとても心地よかったです。特にクラブソーダはゴリゴリの強炭酸がとても心地よく、安い上にとても相性がよいというお財布にやさしい銘柄です。
そして今回の一押しには、山崎の天然水でつくったソーダを挙げたいと思います。
1:2で作るこの組み合せは、先に書いた通り、とにかく全体が調和して上品。前述の硬水ので感じるリスキーな印象をきれいに拭い去ったものと言えばいいでしょうか。香りを閉じ込めるタイプのグラスで楽しむと、より一層美味しさを味わえると思います。
今回の試飲も興味深い結果となりました。炭酸割りは強炭酸のしゅわしゅわ感が命と思いがちですが、微炭酸の美味しさは新たな境地ですね。
2015/05/06
書いた人
koching
奄美黒糖焼酎語り部。
もったいなくて飲めないお酒を買い集めるのが趣味。
甘いものでも辛いものでも、なんならお酒(の瓶を眺めること)を肴に酒が飲める人種。