天下一チャイ

紅茶が好きだ。よっぽど気が向かないとコーヒーは飲まない。毎夜のごとき晩酌のたまの休みには、紅茶を飲むことが多い。特に寒い季節はチャイを作る。

もう20年近く前、インド系の友人の家に遊びにいった時、おかあさんが大量のチャイを沸かして、ポットに入れているのをみたときの衝撃ったらなかった。日本のおかあさんが毎朝ポットにお湯を沸かして、いつでも緑茶を飲めるよう準備するのと同じように、インドのおかあさんは毎朝家族が起き出す前にチャイを沸かすらしい。「うそっ、チャイ飲み放題?!」と大喜びした私に激しくウケたおかあさんは、目の前でスパイスグラインダーを使ってチャイマサラをつくり持たせてくれた。チャイに関しては今でもなんとなく、ホールスパイスではなく市販のチャイマサラを使う。

温かい飲みものと黒糖焼酎という組み合わせを考えてみようと思った時、まっさきに浮かんだのがチャイだった。そして、直感的にひらめいたのは沖永良島・新納酒造の天下一。天下一はロックで飲むとミネラルに由来する独特のくせとキレがすぱっと口のなかを走る。ところがお湯割りにすると、上質な海塩を舐めた時にも似たやさしくやわらかな磯の香りと甘さが立ち昇るのである。天下一のお湯割りは黒糖焼酎界でも首位を争う旨さだと思う。

いつものようにチャイを入れる。小鍋にお湯が沸いたら茶葉を投入。適度に煮出したら好みの量の牛乳とチャイマサラを入れる。いつもはここで再沸騰したらできあがりだが、今回は黒糖を落とした。そして、予め常温の天下一を入れておいたカップに注ぐ。

天下一とチャイの写真

なんと!天下一のお湯割りに感じるあのなんともいえない香りが活きている!その香りがスパイスをうまくくるんで味の層に幅を出しているようだ。同時に入れたチャイと天下一チャイを飲み比べてみるとはっきりわかるのだが、天下一チャイのほうがめっぽう旨い。そして、この香りと味のバランスは、冷めてきても続いた。ラムやブランデーでは決して代用できない旨さなのだ。想像以上のマッチングに、天下一の懐の深さを実感した。

黒糖焼酎を飲み慣れていない人には果汁や炭酸水で割る飲み方をすすめがちだが、ちょっと視点を変えて、いつもの飲み物に少量の黒糖焼酎をプラスする楽しみ方を提案するのも楽しそうだ。

**目分量だがチャイ100mlに大さじ1の天下一というぐらいの割合がおすすめだ。欲張って倍の量の天下一を注いでみたところ、バランスが崩れてしまった。何事もやりすぎはいけない。

2014/11/15

書いた人

peng

奄美黒糖焼酎語り部。
黒糖焼酎に合う料理や黒糖焼酎を使った料理を考える時間が至福。
毎年2月にたんかん・とびんにゃ商人と化す。